(viernes, 31 de mayo 2024)
2023年12月1日(月)~10日(火)
Showレストラン「ガルロチ」(東京・新宿)
写真/近藤佳奈
Fotos por Kana Kondo
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko
ロシオ・モリーナがガルロチに来る――。
この情報が発表されたとき、日本のフラメンコファンたちは驚きと喜びで沸き上がった。
スペイン芸術界でもっとも栄誉ある国家舞踊賞を弱冠26歳で受賞。優れた舞踊技術と高度な芸術性を武器に独創的な作品を発表し続けるカリスマ的ダンサー、ロシオ・モリーナ。
開幕以来連日、一般の愛好家からプロのアーティストまで大勢の観客が訪れ、SNSでも絶賛や称賛のコメントが寄せられた。店内は賑わい熱気であふれ、皆ロシオを見るためにこの瞬間ここに集まっている。
客席に配られていたロシオからのあいさつ文には、今回の公演はその場のインスピレーションで生み出される二度と繰り返されることの無い儚い作品であり、楽しみをベースにインスピレーションとひらめきでトラディショナルな曲目を駆け巡る、とある。プログラムは明かされていない。それもまた、いつも以上にワクワク感が高まる。
この日の舞台はジェライのギターソロからスタート。しっとりとメロディアスなフレーズをなめらかに奏でる。曲のテンポが上がり空気が温まってくると、黒のファルダ・デ・コーラをまとったロシオが登場。上品なブルーグリーンのカンカンが鮮やかに映える。そして身体にフィットしたトップスが、彼女の表現豊かな身体使いを際立たせる。
ソレアの曲を深く、時に激しく踊る姿には、まるで踊りの女神のような神々しさすら覚える。耳を済まさないと聴き取れないくらいの繊細な音色でギターとサパトスを奏で合うシーンは、二人の技術と呼吸が高いレベルで調和して生まれた極上の瞬間だ。
マルティネーテは、ペペがサリーダを歌い出すところからもう客席からハレオがかかる。艶やかで魂のこもった歌声が会場に響き渡る、至福の時間。オルーコとロシオは足を打ち身体を叩き、呼吸やあらゆる動きを使って、そのコンパスの波に身を委ねリズム遊びを繰り広げる。
舞台の下手側に置いたテーブルを4人で囲み、カンテとギターに合わせてのコンパス遊び。パルマやヌディージョで巧みにリズムを刻み、ギターも次々にフレーズを展開していく。
ロシオが2本の赤いアバニコを手に、グアヒーラをコケティッシュに踊り出す。クルクルひらひらと舞うアバニコが鮮やかな蝶々のようで愛らしい。ブレリアになると踊りも演奏も次第に激しさを帯び、ついにはアバニコが壊れてもお構いなしで、今この瞬間を楽しみながら踊り続ける。クライマックスはオルーコとのパルマの掛け合い。座ったままで、どこまでも続くようなコンパス遊びを繰り広げていく。
ロシオの言う「最も自然で野生な状態のままの伝統的なフラメンコ」を、休憩無しで繰り広げた75分間。どんなにリズムで遊んでも崩れない確かなコンパス感は、4人の個の技術の高さとメンバー同士の信頼関係の為せる業だ。
究極のリズム遊びを堪能させてくれた今回のグループ公演。忘れられない名場面の数々が、観客それぞれの心の中に強く刻みつけられたことだろう。
【出演】
Baile(踊り): Rocío Molina
Guitarra(ギター): Yerai Cortés
Cante(歌): Pepe de Pura
Compas y baile(コンパス&踊り): José Manuel “El Oruco”
*ロシオ・モリーナの特集記事はこちらから。
>>>>>
Comments