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リレー連載:私の新人公演 -2023年の挑戦- 5

第5回 藤岡里織

【バイレソロ部門/奨励賞】

 

(jueves, 14 de marzo 2024)

 

フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。

昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。

第5回目は、バイレソロ部門で奨励賞を受賞した藤岡里織さんです。

 

舞台写真/一般社団法人日本フラメンコ協会 提供 

編集/金子功子

Edición por Noriko Kaneko

 


藤岡里織 第32回新人公演バイレソロ部門奨励賞 2023年

 新人公演にエントリーした動機は、フラメンコに向き合いたいという気持ちと尊敬するアーティストの方々と劇場公演をしたいという気持ちからでした。


 私にとって新人公演は、フラメンコを始めて数年の頃に群舞で出演したものの、その後フラメンコお休みの時期もあり少し遠い存在となっていました。

 それが変わったのが数年前。新人公演を通してフラメンコに向き合っている方が身近にいたことがきっかけで、素晴らしい機会だと改めて気づきました。加えて、それが尊敬するアーティストさんとの劇場公演となればなお貴重な場だと感じ、2022年に初めてエントリーしました。その年は抽選で出演叶わず、翌年の昨年は事情でエントリーを躊躇していましたが、今やらなければ二度と機会はないのでは、と思い直し、エントリーを決めました。


 本番までの日々は、出来ない事はもちろん、理解できない事、まだ見えてさえいない事が果てしなくある状況を改めて突きつけられる日々でした。


 音楽を表現する、一音一音、一つ一つの体や顔の動き、何を届けたいか、などを見つめ自分に落とし込んでいく、これを7分もの演目で進んでいくのは果てしない道のりに感じました。これ自体はこれまでもこれからも同じなのだと思いますが、新人公演という機会だからこそ、細部まで拘ってアドバイスいただける師匠やアーティストの方々の言葉をできる限り受け止め、自分なりに落とし込んでいきたい、そんな気持ちでした。

 7分は私にとっては本当に長く、本番までこの道のりを続ける体力と精神力、更に、本番を演じ切るための体力と集中力、その為の自分自身のコントロールの大切さを痛感しました。


 本番3日前、自分の出来なさ具合と体力の限界を感じ、思わず師匠に「出来たことは少なかった」と呟いてしまった事を今でも覚えています。まだ本番が始まってもいないのに。


 そこから本番までは、開き直ったとでもいうのでしょうか、少ないなりにも出来る事を丁寧にやっていく、支え一緒に進んでくれた方々を信じ、自分をできるだけ客観的にみて何をしたいかどこまでできるかをイメージするように努め、少し落ち着いて過ごせました。


 本番当日は、もう今日しかないと思うと「楽しもう、やれる事は全部やろう」という思いが強かったように思います。師匠やアーティストの皆さんが、熱くも穏やかで温かくサポートしてくれている事を感じられ、満ち足りた時間でした。


 支度-ゲネ-本番の波は事前にイメージしていました。これは、何度も付き添った娘の習い事の公演やコンクールから学んだ事も多く、いつも私は裏方のいわば娘のマネージメント役ですが、今回は自分自身をマネージするのねと思うと、これまで自分自身の時間とのバランスに葛藤を感じていましたが、全てが繋がってここに居ることが腑に落ちました。


藤岡里織 第32回新人公演バイレソロ部門奨励賞
(写真)本人提供

 本番の7分間は、舞台上の全員の温かさを最も感じ、練習よりもゲネよりもムシコスの皆さんが間近に感じられ同じ空間にいることを実感した幸せな時間でした。これを感じるための道のりだったなら険しくてもいいや、と思えたことを覚えています。


 受賞は、大変光栄で嬉しく思うと同時に、当初は驚きと戸惑いもあり、発表当日はあまり眠れなかった事を覚えています。ここまで導いてくださった師匠やアーティストの皆様や支えてくれた方々や家族への感謝と共に、これまで受賞された素晴らしい方々が浮かび、身の引き締まる思いです。


 今後も、まだまだ見えていないことばかりのフラメンコを、一歩ずつしっかり学んでいきたいと思っています。


 最後に、こうして振り返ってみて、新人公演を通してフラメンコに向き合った過程で得られた多くの学びと温かいサポート、そして、本番の舞台の時間は何事にも代え難い宝物だった、と改めて感じます。



【プロフィール】

藤岡里織(Saori Fujioka)/香川県出身。吉野真末氏に師事しフラメンコをはじめる。その後、河内さおり氏、萩原淳子氏、稲田進氏に師事し、東京のタブラオを中心に活動中。2023年 第32回新人公演にて奨励賞、ANIF会員賞を受賞。


【新人公演とは】

一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。

プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。

バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。

(*一部、ANIF公式サイトより引用)


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