第1回 畑中美里
【バイレソロ部門/奨励賞】
(jueves, 15 de febrero 2024)
フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。
昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。
第1回目は、バイレソロ部門で奨励賞を受賞した畑中美里さんです。
舞台写真/一般社団法人日本フラメンコ協会 提供
編集/金子功子
Edición por Noriko Kaneko
新人公演に初めて出場したのは、2018年ですからわりと最近です。
幼少より踊り中心の生活をしていて、発表会や公演、小学校高学年になってからはコンクールにも出場し入賞した経験もありましたので、19歳で始めたフラメンコにはコンクールや舞台などの魅力を感じませんでした。
人生の転機に一旦フラメンコから離れ、フラメンコゼロの生活を約6〜7年送りました。その間はレッスンはもちろん、CDも聴かずの生活でしたが、子育てが少し落ち着いた頃から週に一度のレッスンに通い始めました。その1年後、発表会に出てから踊る機会を多方面でいただくようになり今に至ります。
そんな生活の中、同世代のフラメンカたちが新人公演に向かって奨励賞に向かって切磋琢磨している姿をみて、自分も人前で踊る立場として挑戦しないのは良くないと思い始め40を過ぎて出場致しました。
最初は力試しとしての参加でした。好きなように踊り、票はどなたからかいただきましたが大した評価はなかったように思えます。その次も勢いで出たのを覚えています。その後コロナ禍もあり1年休んだその間に、ギターの菅沼聖隆くんと出会ってしまって、あぁ、やっぱり踊りたいなぁ、と作品を作りたいなぁと心の底から思い始めました。今では売れっ子ギタリストで素晴らしいのは周知の事実ですが、とにかく踊りたくなる、そういうギターでした。
ですから3回目の出場は、過去2回より全然思い入れはあったし注目もしていただきましたが、結果には届きませんでした。
若干のふてくされが抜けないまま、ライブなどで作品を作ったり1年間そんなことをして過ごしたのちの今回の出場でした。
2024年の優先権を得るためのエントリーのはずが結局出場することとなり、正直焦りました。良きアドバイザーでパルマとして参加してくださった稲田進さんに相談しつつ、また菅沼くんに楽曲を作っていただき、正味1日で構成のベースを仕上げ、合わせは3回と最短で本番に臨みました。
年齢のせいかカラダが日々キツくなっているのを感じましたので、もう最後にしたい!という強い思いで臨みました。結果にこだわらない生き方をしてきたので、そういうタイプの人間からするときつい期間でした。とにかく毎日徹底して練習しよう、と決めました。どんな理由でも毎日やる。でも1ヶ月だけ。
1番キツい時間で、1番充実した時間でした。子どもの時毎日お稽古三昧だったあの頃。恵まれていて素晴らしい時間だったのだと、改めて踊りを始めさせてくれた亡き母に感謝しました。
本番は、コンディションを整え、できる限り集中して臨みました。舞台袖に引っ込んだ瞬間、へたり込んだのを覚えています。
共に参加してくれたカンテのチェマ、ギターの菅沼くん、パルマの稲田さんから口々に褒めていただきほっとしました。
受賞したことを知った時には、嬉しさのあまり泣きました。本当に頑張るとこんなにうれしいんだな、と思いました。家族には出場することで変に気を遣わせても申し訳ないと思って黙っていましたので、いろんな意味でびっくりしてくれました。
振り返ると様々な巡り合わせで運良く受賞できたと思う反面、自分の場合はやはり、日々の積み重ねではないかと思っています。
日々、ヌメロと向き合うこと、基礎的なカラダ作り、ポジション、表現方法、音の取り方…などなど勉強することは山ほどあり過ぎて全く追いつきませんが、例えば、Tarantoを聞いてあぁ、Fandangoからきてるね、という感覚を身につけるまでに3年かかりました。つまりそういうことが本当はフラメンコで大事なのではないかなぁと最近、思います。それはフラメンコを大事に大事にしてきたスペイン人に対するリスペクトでもあるし、フラメンコを丸々愛することなんじゃないかと。
今年はクラスも充実させたいし、企画の公演も現在進行中です。踊り手としてさらに飛躍したい。新人公演がまさに登竜門となったと改めて感じています。
【プロフィール】
畑中美里(Misato Hatanaka)/6歳よりモダンバレエを始め、全国舞踊コンクール(入賞)、公演などに出演。19歳からフラメンコに転向。碇山奈奈、箆津弘順、えんどうえこに師事。タブラオ、公演などに出演。企画ライブを運営。29歳で活動を休止後復帰。La winy、Jaime el estampio, Elena La More, Sergio Aranda などに師事。現在、都内タブラオ、企画ライブに出演する傍らライブやイベントを企画、運営する。
【新人公演とは】
一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。
プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。
バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。
(*一部、ANIF公式サイトより引用)
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