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リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 4



第4回 伊藤千紘

【バイレソロ部門/奨励賞】


(viernes, 12 de mayo 2023)


フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。

昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。

第4回目は、バイレソロ部門で奨励賞を受賞した伊藤千紘さんです。


編集/金子功子

Edición por Noriko Kaneko


 私が今回の新人公演にエントリーした動機は2つあります。

 新人公演に初めて出たのは2017年で、翌18年にも出た後はエントリーしておらず、今回は5年ぶり3度目でした。実は4月ごろまでは出るつもりではなかったのですが、ここ数年のコロナ禍で、それまで当たり前だったことがいかに当たり前ではないか、というのを実感し、今挑戦できる1つ1つの機会を大事にしようと思ったのが出場を決めた理由のひとつです。

 もうひとつは、2020年から21年はいろんな制限下ではありましたが、私にとってはじっくりフラメンコを楽しみ学ぶ時期でした。スルメを嚙みしめるかのように。教室でのレッスン内容はそれまでと大きく変わり、踊らず、靴もはかず、パルマと足踏みのみ。でも、これ以上に何が必要なんだろうと思います。そんな、どこにもないクラスメニューに切り替え、真実を教示しようと舵を切ってくれた先生には本当に感謝です。その奥深さと言ったら「どこまでも」ですから、終わりはないのですが、僅かながらでもこの2~3年で得たものを、自分の踊りに落とし込んでいく機会として挑戦してみようと思ったのが、2つ目の理由です。結果、まだまだですが。


 本番を迎えるまでに大変だったのは「スケジュール調整と体調管理」と「衣装づくり」でしょうか。私は会社員をしているので、基本土日にリハやレッスンを調整させてもらい、余裕のある時は平日夜自主練という感じでやりくりしていますが、仕事が忙しく寝不足も続き、照明合わせ当日の朝は倒れました。なんとか午後の合わせには行けたのですが、体調管理、特に睡眠と栄養補給は大事ですね。真夏ですし。

 また、今回の衣装は自分で生地を選び、デザインはアトリエプリマの益子さんに相談しながら作りました。最終的に、布からあんな立体的な衣装ができるなんて魔法のようで、衣装の奥深さに改めて感動し、力のある一着を作るにはどうしたらいいかを考える良い勉強にもなりました。

 その他、踊りに関してはもちろん個人レッスンでは何度も崖から突き落とされ血だらけになりましたが(例えです)、それが今の自分には足りないことのヒントであり、だから今の師匠に師事しているわけなので、それを経験する意味でも新人公演に挑戦する意味はあると思っています。


 本番当日は会場も広く、リハの時に自分の出す音がいろんな方向に拡散して反響してくるので戸惑いました。でも「自分が出している音を信じれば大丈夫」と先生から頂いた言葉に、そうか!と腑に落ち、本番はとても落ち着いて舞台に立てました。そして、1・2回目に出たときはとても広い舞台という感覚だったのが、今回はムシコス(=ミュージシャン)も、目の前の空間も、舞台の端から端も、不思議と色んなものが近くに感じられ、今までにない感覚だったので、賞が取れなくてもその感覚を味わえただけで実は満足でした。


 受賞を知ったときは、驚きました。発表のタイミングは仕事中だったので、ケータイに溜まったメッセージで気づき、初めは戸惑いましたが、後からじわじわ納得できました。何よりも、ここまで導いてくれた師匠、支えてくれたムシコス、関係者全員に感謝の気持ちでハチ切れそうでした。また、今年は素敵な受賞式や受賞者ライブなども協会が企画して下さり、理事の方々、受賞者の方達とも顔を合わす機会を頂けとてもありがたかったです。


 最後になりますが、フラメンコ、まだまだ見えていないものがあります。でも、それをこれからもずっと探し続けられると思うと、それだけで私は最高だと思います。受賞したとて自分自身は変わるわけではなく、フラメンコだけにすべてを捧げられる生活もしていませんし、出られるライブの機会も限られます。

 それでも、これからもずっとフラメンコが好きに変わりないですし、いつかコンパスに触れたい。フラメンコを聴いて自分の中に満ちる感動を見失わず、学び続けたいと思っています。


 最後までお目通しいただき、ありがとうございました。今年出られる方々、くれぐれも体調管理はお気を付けくださいませ。皆様のご健闘をお祈りしております!


©Yuki Omori


【プロフィール】

伊藤千紘(Chihiro Itou)/東京外国語大学在学中に部活でフラメンコを始め、岡本倫子氏、後藤なほこ氏より習う。在学中に渡西し、帰国後はエストゥディオブレーニャに入門。大沼由紀氏に師事し続け現在に至る。2018年第1回全日本フラメンココンクール審査員特別賞受賞、2022年第3回全日本フラメンココンクールファイナリスト、2022年第31回新人公演奨励賞受賞。


【新人公演とは】

一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。

プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。

バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。

(*一部、ANIF公式サイトより引用)


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