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リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 3

第3回 鬼頭幸穂

【バイレソロ部門/奨励賞】


(viernes, 5 de mayo 2023)


フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。

昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思い、これから挑戦する人に伝えたいことなどを語ってもらいました。

第3回目は、バイレソロ部門で奨励賞を受賞した鬼頭幸穂さんです。


編集/金子功子

Edición por Noriko Kaneko


 私が新人公演に挑戦しようと思ったきっかけは、今のままでいいのか?という思いからでした。コロナの影響で減っていたライブは少しずつ戻ってきていましたが、これからの自分への不安や様々な気持ちとずっと向き合うことができないでいました。


 そんな中、とあるライブで「コンクールを受けた方がいい」と言う助言を受け、まず自分が本当はどうしたいのかを考えるきっかけができました。そして、勇気が出ないだけで本当はそういう事に挑戦したいと思っている自分がいることに気付きました。大袈裟かもしれないけどいつ自分が踊れなくなるかわからないこの激動の時代に、今自分ができる事は全部しようと思い、新人公演挑戦の決断をすることができました。


 出演が決まってからは本当にあっという間に時間が過ぎていきました。自分の振付構成、体の動かし方、表現方法全てに自信が無く、常に疑問を感じては考え、それでも答えが出ることはありませんでした。焦る気持ちや不甲斐なさに怒りを感じ、踊ることを苦痛に感じるようになってしまいました。このままではいけないと思い、少し休んで自分はフラメンコのどこが好きなのか、何がしたくて踊り続けてきたのか考え直し、その答えが出てからは少しだけ前向きに取り組むことができました。もちろん自信の無さや不安が一掃されたわけではありませんでしたが、「私の好きなフラメンコ」を作ることに注力することができました。そして段々良い評価を受けることよりも、見てくださった方々が純粋に楽しかった!と思っていただけるような7分間にしたいという思いに変化していきました。


 とは言っても前日は緊張して、一睡もできないまま本番当日を迎えてしまいました。


 一睡もしていない状態で正直コンディションは良くなく、ゲネプロや練習時間、ヘアメイクなどの時間は極力体に負担のかからないように過ごしていました。


 自分の出番は後半の部が始まってから間もなくだったので、前半の部の終わりかけからは落ち着いていられず、ずっとソワソワして何をしていたのか思い出せないほど極度の緊張感の中にいました。


 舞台袖には行くべき時間よりも早く行ってしまい、地べたにしゃがみ込んでいました。その地べたのゾッとする様な冷たさは未だに覚えています。担当してくださるミュージシャンの方々と舞台袖で会話をして我に返りつつも、出番が目の前まできていることにまた血の気が引いていきました。ぎりぎりまで「なんでこんな大舞台に立とうなんて決めてしまったのだろう…」と思いましたが、いざ暗転になり自分の立ち位置まで来ると、諦めなのか開き直ったのか「代わりに踊ってくれる人はいない、このソレア・ポル・ブレリアを踊れるのは自分だけだ」と思うことができました。本番中はとにかく集中力を切らさない、そのことだけ考えていました。


 終わった後は絵に描いたように膝から崩れ落ちたのを覚えています。達成感があったかどうか問われると、正直強烈な疲労感の方が強かったように感じますが、直後の記念写真ではとてもいい表情をしていたのできっと達成感や、やり切ったという気持ちもあったのだと思います。


 結果発表の日は朝から食事が喉を通らず、発表時間ではないのにメールを何度も確認していました。夜の19時半に結果発表のメールが届き、受賞者の中に自分の名前を見つけた時は、全身金縛りにあったように体が動かなくなってしまい、喜びはもちろんですが衝撃と戸惑いの気持ちがありました。


 フラメンコ界の多くの素晴らしい方々が持っている「新人公演の奨励賞」を自分も頂き、これからそれを背負って踊っていかなければならないという事をなかなか受け入れられずにいました。ですがその後頂いた沢山の賛辞の言葉や沢山のライブを通じて、今までと変わらず努力を続けて成長をしてくことに変わりはない、と思うことができました。


 新人公演は、お教室の発表会やライブと比べるとかなりハードルは高いかと思いますが、私は新人公演でしか得られないものがあるのだと思います。フラメンコ的に成長できるのはもちろん、私自身は人としてもタフになれたと思います。大きなことを決断することはとても勇気のいることですが、それだけで大きく成長できるのだと、この新人公演を通じて学ぶことができました。そして新人公演がこれからも多くの人にとってそれぞれの素晴らしい経験になることを、心から願っています。

サポートしてくれたミュージシャンのみなさんと


【プロフィール】

鬼頭幸穂(Yukiho Kitou)/1998年生まれ名古屋市出身。幼少よりフィギュアスケートを始め、6歳よりフラメンコを加藤おりはに学ぶ。19歳でセビージャに1年留学。ダビット・ペレス、ハビエル・エレディア等に学ぶ。2022年第3回全日本フラメンココンクールファイナリスト。第31回新人公演にて奨励賞、ANIF会員賞を現地、配信共にトリプル受賞。


【新人公演とは】

一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。

プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。

バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。

(*一部、ANIF公式サイトより引用)


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