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リレー連載:私の新人公演 -2022年の挑戦- 1

第1回 鈴木旗江

【バイレソロ部門/奨励賞】


(viernes, 21 de abril 2023)


フラメンコを志し、さらに高みを目指すために目標として掲げられる大舞台、新人公演。

昨年の入賞者に、挑戦へのきっかけや本番までの道のり、自身の経験や思いを振り返ってもらいました。

第1回目は、バイレソロ部門で奨励賞を受賞した鈴木旗江さんです。


編集/金子功子

Edición por Noriko Kaneko


 あれは2018年初頭か2017年末だったか、生徒さんの一言。

「先生は新人公演には出ないのですか?」

 そうだ…新人公演。それまで2回出ていたのだがチャレンジの火が消えていた。

 長く教室もプロ活動もしていての新人公演再チャレンジ。これはもう覚悟を決めて取り掛かるしかない。自分の弱点を曝け出して踊りを変えていこう。


 新人公演といえば、稲田進さんという指導者が有名…かつみんさん(通称)とエスペランサで話した時に、絶対上手くなるから習った方がいいよと言っていたことを思い出し、2018年2月に門を叩く。前日から緊張でフラフラで、初めての個人レッスンを迎える。

 最初のレッスンで怒られるかと思ったが、つとめて冷静なアドバイス。データに基づいた指導に納得。もうこの指導についていく覚悟を決めた。

 ついていくと決めたら、とにかく稲田先生の言う通りにできることを常に課題にした。

 内圧と間のメソッドが最初の頃は全然わからず、とにかくお腹に力を入れて踊っていたらみるみる痩せていき(内圧ブートキャンプと私は呼んでいた)、会う人ごとに大丈夫かと心配されて、いや充実っぷりすごいんですけど緊張しすぎてレッスン前とレッスン後は食べられないんです、と答えていた。

 レッスン中は必ず動画を撮り後で観る。アドバイスを帰りの電車でメモに書く。ダメ出しは次回レッスンには潰していく。その繰り返し。

 すると、エスペランサに出た時に故田代さんから、旗江ちゃん踊り変わったね!すごく良くなったよと言われた。本当に嬉しかった。


 2018年、19年と自分が踊ってきた振付に稲田先生の指導演出で新人公演には出たのだが、次は稲田先生の振付で出て賞を取ることを目標にしたくなってきた。それはますます自分を追い込むことで、それが趣味だと思うしかない状況になってきた。

 そこにまさかのパンデミック…2020年に世界が大混乱になるとは。新人公演は中止になり、社会活動も危うくなってきた。そんな中、練習場所を提供してくださった管理人さん…ありがたくて涙が出た。生徒さんたちも動画でレッスン継続してくれて、本当に感謝だった。

 日々練習していても、昨日より今日の自分が伸びているのか?疑問だった。そのさなか、次回の新人公演は稲田先生の振付で出ると決心した。

 2021年、練習しても練習しても振付は自分から遠くなっていくばかり。できることもできなくなり悶々としたまま本番を迎え撃沈…。帰り道ビールを1缶奢ってくれて、良かったですよ…とマスク越しの小さな声で励ましてくれた先生。


 そこから奮起。2022年は猛烈チャレンジの年にしようと、別のコンクールへの出演も決心。レッスンが佳境に入るのとほぼ同時期に、母の具合が悪くなり…、まさにシギリージャだった。稲田先生も、シギリージャを身体に染み込ませ、滲み出させるための指導をトップギアに。この時期に心掛けたのは、自主練は時間を長く取ることがいいのではなく、体力とメンタルのバランスを考えてやること。いい感触の時に終わらせて、マイナスな感情を残さないようにした。

 全日本コンクールは予選から本選まで2週間しかなく別の曲を踊る。そのスーパーハードな時期をオンライン飲みで支えてくれた(古屋)美枝ちんに感謝。

 本番直前1週間は、自主練はひたすら踊って撮って観てダメ出し。本番の照明どおり真っ暗な中に自分だけ明るくして踊る。あとはメンタル。自信を持てる状態にすること。私はもし振りを間違えても納得した踊りができる自信があった。身体の真ん中に炎が灯った感覚があった。炎が燃え続けた。


 自分に合った指導と演出が大事。それは自分自身でもいいとは思うし、私には稲田進師匠の指導がすごく合っているのだと思う。


(写真)本番後の1枚


【プロフィール】

鈴木旗江(Hatae Suzuki)/学生演劇から唐十郎の劇中フラメンコに感銘を受け鈴木眞澄氏に師事。2018年より稲田進氏に師事。第2回Webフェス三冠、第3回全日本フラメンココンクールファイナリスト、第31回新人公演奨励賞&ANIF会員賞W受賞。


【新人公演とは】

一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。

プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。

バイレソロ、ギター、カンテ、群舞の各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。

(*一部、ANIF公式サイトより引用)


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