リレー連載:私とフラメンコ -新人公演を通して- 6
- norique
- 6月28日
- 読了時間: 4分
第6回 諸藤ふみ
【バイレ・ソロ部門 奨励賞】
(sábado, 28 de junio 2025)
あなたにとってフラメンコとは何ですか――。
仕事として関わっている人、趣味として楽しんでいる人、自身の生きがいとして無くてはならない人など、その向き合い方は人それぞれ。
そうしたフラメンコへの思いを、昨年の日本フラメンコ協会主催「第33回フラメンコ・ルネサンス21『新人公演』」の入賞者の方々にエッセイとして綴っていただき、リレー連載という形式でご紹介します。
フラメンコとの出会い、新人公演を通して得たものや感じたこと、自身にとってのフラメンコへの思いなどを語っていただきました。
第6回目は、バイレ・ソロ部門で奨励賞を受賞した諸藤ふみさんです。
編集/金子功子
Edición por Noriko Kaneko

[撮影]川島浩之
[写真提供]一般社団法人日本フラメンコ協会
フラメンコを始めたきっかけは、軽い気持ちで体験レッスンに参加したのが最初です。
私はダンス未経験で、当時は右も左もわからずでした。ダンス心もなく、コンパスや体の動かし方がちんぷんかんぷんでした。
まさか、ここまで長く続くフラメンコとの関係の始まりになるとは夢にも思っていませんでした。
フラメンコを学ぶうちに、フラメンコはカンテ、ギター、バイレとの三位一体であり、スペイン・ヒターノの歴史や文化も奥深いものだと知っていきました。
フラメンコをもっと知りたい観たいの気持ちで、ライブやクルシージョに通うようになり、自分の憧れるフラメンコが少しずつ見えてくるようになりました。
そんな中、現在所属しているスタジオの主宰である奥野裕貴子先生、SIROCO先生と出会い、私のフラメンコ人生はガラッと変わったと思います。
フラメンコを続けていくうちに、新人公演は憧れの舞台となりました。
挑戦したのは今回で4回目になります。
結果が出ない悔しさも重なり、挑戦すること自体に迷いや不安が生まれた時期もありました。
それでもやっぱり「この舞台を目指したい」という気持ちが消えることはなく、4度目のエントリーを決めました。
カンテはフアン・ビジャール・イホさん、ギターは徳永健太郎さん、パルマはSIROCOさんと、最高のメンバーにお願いすることができました。
当日のリハーサルでは、普段ならしないようなミスをしてしまい内心かなり動揺していました。
でも本番にフアン・ビジャールさんのサリーダを聴いた瞬間に、全てが吹っ飛びました。
恐れも、不安も、自分を良く見せたいというエゴも全部消えていきました。
終わった後に不思議な幸福感があった舞台でした。
そんなことは初めてで、そんな舞台に奨励賞という結果を頂けたことはとても嬉しかったです。
フラメンコの魅力は、人の感情や生き様がむき出しになる瞬間にあると思います。その奥底から湧き上がるような爆発力に、私は心を奪われ続けています。
私にとってフラメンコは、異文化であり、畏敬の対象であり、そして果てしないものです。
学べば学ぶほど、自分の知らなさに気づかされます。
でも、その奥深さがあるからこそ、続けていきたいと思えるのかもしれません。
どこまで行っても完成はなく、常に学び、人生と共に変化し続けられる場所が、私にとってのフラメンコです。
新人公演に挑戦するという過程で、たくさんの学びがありました。
遠回りと思えたことも、今は無駄なことは何もなかったと思います。
まだまだ道半ばですが、またいつかあの舞台のような幸福感を感じることを夢見て、フラメンコを学び続けていきたいと思っています。
【プロフィール】
諸藤ふみ(Fumi Morofuji)/2007年フラメンコに出会い、京都にて始める。奥野裕貴子氏、SIROCO氏に師事。2019年全日本フラメンココンクールで優勝という快挙を成し遂げる。そして、2020年スペイン・セビージャの老舗タブラオ『Los Gallos』に出演を果たし、日本フラメンコ界の歴史の1ページにその名を残した。現在関西を中心に活躍し、また京都校ロス・タラントスにて講師を務め育成にも力を入れる。
【新人公演とは】
一般社団法人日本フラメンコ協会(ANIF)が主催する、日本フラメンコ界の発展向上のため、次代を担うフラメンコ・アーティストの発掘および育成の場として、1991年から毎年夏に開催されている舞台公演。
プロフェッショナルへの登龍門として社会的に認知される一方、「新人公演は優劣順位をつけるためのものではなく、新人へのエールを送るために存在する」という当初からの理念に基づき、すべての出演者が主役であるとの考えから順位付けは行われません。
バイレソロ、群舞、ギター、カンテの各部門に分かれ、若干名の出場者に奨励賞、またはその他の賞が与えられます。
(*一部、ANIF公式サイトより引用)
〈参照URL〉
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