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スペイン発☆志風恭子のフラメンコ・ホットライン

(miércoles,3 de mayo 2023)


文/志風恭子

Texto por Kyoko Shikaze


 スペインの春はアンダルシアを訪れたい。フラメンコ好きの旅行者にもお勧め。セビージャなど、アンダルシアの街々では街路樹のオレンジの白い花が咲き乱れ、甘い香りに包まれます。毎年日付が変わる聖週間、今年は4月の第1週でした。それから2週間あけて今度はセビージャの春祭り、フェリア・デ・アブリル、4月祭りが始まります。その前の週にはマイレーナ・デル・アルコール、5月になればヘレスのフェリア、馬祭りも行われます。お祭りの時期にはホテルの料金も上がり、予約も取りにくくはなりますが、それでもできれば一生に一度は訪れてほしいのがアンダルシアの春です。


【フラメンコ・シグロXXI】

 聖週間の前、3月21日から23日までの3日間、セビージャ大学の文化センターCICUSで、第一回フラメンコ21世紀セミナーが行われました。これは、フラメンコの歴史、記憶、知識の保持と普及を目的として2021年に設立された人類遺産フラメンコ21世紀文化協会が企画し、大学の協力のもと開催したもので、協会設立者の一人であり第一線で活躍する歌い手ホセ・バレンシアを始め、踊り手パストーラ・ガルバン、ギタリストのホセミ・カルモナらアーティストによるマスタークラスや講演会などが行われました。 

左からペドロ・ペーニャ、ペペ・アビチュエラ、トマティート、テレ・ペーニャ、ホセ・バレンシア、パストーラ・ガルバン

©Kyoko Shikaze


 最終日は、協会の名誉会員であるベテラン・ギタリスト、ぺぺ・アビチュエラ、ペドロ・ペーニャ、トマティートらにお話を聞く会がありました。ペドロ・ペーニャの「フラメンコにはヒターノのフラメンコとそれ以外があり、別の物だ」という主張に対し、トマティートが「ニーニャ・デ・ロス・ペイネス(ヒターナ)がいてアントニオ・チャコン(非ヒターノ)がいる。パコ・デ・ルシア(非ヒターノ)がいて僕(ヒターノ)がいる」と、フラメンコはヒターノだけじゃないよ、とやんわりと返したのが印象的でした。

 もともとヒターノのアーティストが立ち上げた協会ですが、現在はセラニートなど非ヒターノの会員も加わっています。いろんな意見を忌憚なく話せる場は貴重だと思います。最後はホセ・バレンシアが協会会長でもあるペドロ・マリア・ペーニャの伴奏でリサイタルを行い閉幕。今後もセミナーなど開催予定のようなので注目していきましょう。

ホセ・バレンシアとペドロ・マリア・ペーニャ ©Kyoko Shikaze


【第一回フェスティバル・ギリホンド】

 セビージャ郊外のパロマーレスという町で世界初の、スペイン以外の外国出身者をテーマにしたフラメンコ祭、フェスティバル・ギリホンドが4月12日から4日間にわたって開催されました。ギリとはスペイン人以外の外国人のこと。オランダ人ギタリスト、ティノ・バン・デル・スマンの演奏で、フラメンコ草創期における外国人についての著書もあるビエナル初代監督、ホセ・ルイス・オルティス・ヌエボが開会宣言をし、

開会宣言でのホセ・ルイスとティノ。パルメーラの女性もコロンビアとエストニア出身

©Festival Guirijondo Quico Pérez-Ventana


親族がこの町に住んでいるというラファエル・リケーニの短い演奏の後は、中国人のカンタオーラ、シェン・ワンをアルメニア人ギタリストのバハンが伴奏、

シェン・ワン ©Festival Guirijondo Quico Pérez-Ventana


フランス人カンタオーラが締めた初日に始まり、徳永兄弟らも学んだクリスティーナ・ヘーレン財団フラメンコ芸術学校のシンガポールやフランス、ボリビア、スペインなどの多国籍の生徒達による公演、

ヘーレン財団公演でのエストニア出身イングリッド・ムグ

©Festival Guirijondo Quico Pérez-Ventana


パコ・デ・ルシアのグループで長年活躍したブラジル人パーカッション奏者、ルベン・ダンタスはフラメンコ研究家ファウスティノ・ヌニェスとお話をあれこれ。3日目はウエルバ在住オランダ人ギタリスト、ガスパールやベネズエラ人カンタオーラ“ラ・ニーニャ・デ・ボリバル”が、フランス生まれのアントニオ・モジャとペルー出身オスカル・グスマンと共演。

ルイス・デ・へレスとアリ・デ・トタ、アントニオ・モジャとヘファリン・パラシオス“ニーニャ・デ・ボリバル”

©Festival Guirijondo Quico Pérez-Ventana


 最終日は、ニューヨーク生まれのクリスティーナ・ヘーレンへのオマージュと中国人ギタリスト、カン・ワンの公演、そして再びリケーニの公演で閉幕、と充実のプログラム。このほかにもドイツ人フラメンコ・ジャーナリスト、スザンネ・ゼリンガーによるドキュメンタリー映画の上映や、講演会なども行われました。想像するよりも多くの外国出身アーティストがフラメンコ界ですでに活躍しているのです。フラメンコはアンダルシア生まれ。でもアンダルシアの人だけのものではないのです。来年は日本のアーティストもぜひ、と言われています。

アントニオ・ロペスとカン  ©Festival Guirijondo Quico Pérez-Ventana


【舞台芸術の賞】

 日本では4月は年度始まりですが、スペインの学校は秋に始まります。ただ、3月末から4月にかけては前年に上演された舞台芸術への各賞の発表シーズンのようです。3月23日にハエンで行われたアンダルシアの舞台芸術の賞、プレミオ・ロルカにはフラメンコ部門があり、作品賞はダニエル・ドーニャ、女性舞踊家賞はラ・ピニョーナ、男性舞踊家賞はマルコ・バルガスがそれぞれ受賞しました。

ロルカ賞の受賞者たち


 3月27日にマドリードで行われた舞台芸術アカデミーによる第一回タリア賞では、これはフラメンコに特化したわけではなく舞踊全般の賞なのですが、男性舞踊家賞イスラエル・ガルバン、女性舞踊家賞ロシオ・モリーナ、作品賞マリア・パヘスと、フラメンコが圧倒的な強さを見せました。

 4月18日にカディスで行われた著作権協会財団によるこのタイプの賞の中では老舗のMAX賞授賞式では、ハエン出身のフラメンコとコンテンポラリーのダンサー、バネサ・アイバル『ラ・レイナ・デル・メタル』が最優秀舞踊作品賞を受賞しました。

 文化スポーツ省の舞踊のナショナル・プライズ、プレミオ・ナショナルでもフラメンコ舞踊家の受賞が圧倒的に多いですし、やはりフラメンコはスペインをリードする舞踊だということなのでしょう。おめでとうございます。

 また、先日開催されたへレスのフェスティバルの各賞は、作品賞ラファエラ・カラスコ、観客賞マリア・ホセ・フランコ、新人賞イバン・オレジャーナとラファエル・ラミレス、ギター賞ピノ・ロサーダ、作曲賞マヌエル・バレンシア、伴唱賞ヘスス・コルバチョ、新人賞ベルナルド・ルビチでした。


【筆者プロフィール】

志風恭子/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期修了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。


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