芸術監督 ルベン・オルモ
(jueves, 13 de febrero 2025)
【東京公演】
2024年11月20日(水)~ 24日(日)
東京文化会館 大ホール(東京・上野)
写真/大森有起
Fotos por Yuki Omori
文/金子功子
Texto por Noriko Kaneko

劇場公演の醍醐味は、やはり何といっても大舞台の上で繰り広げられる群舞の迫力と、大小様々なフォーメーションや色彩豊かな衣装で楽しませてくれる視覚的な美しさだろう。
コロナ禍を経て今回6年ぶりの来日公演となったスペイン国立バレエ団公演は、芸術監督に就任してから初来日となるルベン・オルモ率いる総勢80名ものカンパニーによる、スペイン舞踊の「歴史」と「今」を表現する舞踊芸術の粋を集めた素晴らしい公演となった。
オープニングは、1984年の初演以来スペイン国立バレエ団のレパートリーとして数多く上演される『リトモス』。荘厳な音楽と共に、一糸乱れぬ整ったフォーメーションの群舞を繰り広げる。構成もよく練られていて、優美なパレハ(ペア)を魅せたり男性による群舞やパリージョを奏でながらの女性群舞を披露し曲も次第に盛り上がり、壮麗でダイナミックな群舞を展開する。
ピアノの生演奏による幻想的な世界を演出した舞踊作品『ハカランダ』。ソリストのデボラ・マルティネスが一風変わった衣装を着てくるくると回る姿はオルゴール人形のよう。途中でその衣装を脱ぐと、解放されたようにのびのびと踊る姿が軽やかで美しい。

第一舞踊手ホセ・マヌエル・ベニテスのソロによる『サパテアード』では、クラシカルな味わいの音楽の中で見事な足さばきを披露。貴公子のようなその端正な身体美と素晴らしい舞踊技術にすっかり見惚れてしまう。
この日鑑賞したAプログラム最大の見せ場である『ボレロ』。今回は昔ながらのホセ・グラネーロ版の振付で上演された。アール・デコ調の鏡の舞台装置を生かし踊りを一層輝かしく魅せる演出が印象的だ。次々と編成が変わる男女別の群舞が織りなす赤と黒の色彩のコントラストも美しく、素晴らしい照明演出と共に、迫力あるクライマックスを演出した。
2部はアントニオ・カナーレス振付による『グリート』。ミュージシャンの生演奏によるフラメンコステージだ。男性歌手のマルティネーテから始まる迫力の男性群舞によるシギリージャや、静と動のメリハリが際立つ男性3人によるソレア。ミュージシャンの層も厚く、アレグリアスでは女声のハーモニーを重ねた豊かな歌声にオリジナリティを感じた。
ゲストとして今回出演した、日本でも人気の高いエル・フンコはティエントを披露。大きな体格と重いペソを感じさせる深みのある踊りにはオーラが漂い、圧倒的な存在感を示した。
カーテンコールのブレリアではそれぞれのソリストやルベン・オルモ監督も踊るなど、その純粋なフラメンコへの愛情が感じられる和やかなシーンとなった。
スペイン最高峰の美しい舞踊を楽しませてくれた国立バレエ団公演。東京公演では「文化庁 劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業」の対象公演として、合計355名の子供の無料招待と、同行の保護者(条件あり)も特典付きで鑑賞できた。日本における芸術文化の未来の担い手を育むためにも、こうした支援制度が普及してより多くの人に舞台鑑賞を親しめるようになってほしいと願う。
【演目】
Aプログラム「世代を超えて」〜GENERACIONES〜
『リトモス』 振付:アルベルト・ロルカ
『ハカランダ』 振付:ルベン・オルモ (11/20、21夜)
『パストレラ』 振付:アントニオ・ルイス(11/21昼)
『サパテアード』 振付:アントニオ・ルイス・ソレール
『ボレロ』 振付:ホセ・グラネーロ
『グリート』 振付:アントニオ・カナーレス
Bプログラム「祈り」〜INVOCACIÓN〜
『インボカシオン・ボレーラ』振付:ルベン・オルモ
『ハウレーニャ』振付:ルベン・オルモ
『イベリア賛歌』振付:アントニオ・ナハーロ
『フラメンコ組曲~マリオ・マジャに捧ぐ』振付:マリオ・マジャ、ミラグロス・メンヒバル、アスンシオン・ルエダ“ラ・トナ”、マノロ・マリン、イサベル・バジョン、ラファエラ・カラスコ

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