(lunes, 9 de octubre 2023)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai
ミラブラー
先日発売したグラン・クロニカvol.33の特集がミラブラー(正式にはMirabrás(ミラブラース))なので、今回はこの曲種を取り上げます。
形式名の語源は、Mira(ミラ) Blas(ブラス)(見なよブラス君)またはMira(ミラ) y(イ) verás(ベラース)(見りゃわかる)とも言われてきたがはっきりしない。
解っているのはミラブラーという言葉を入れた短い歌詞またはコレティージョがかつて歌われていたので、この形式名が付いただろうという事だ。
今でも歌詞の中に形式名が出てくるが、この点はロメーラとも似ている。ちなみにロメーラは、古い録音は私の知る限りほとんど無く、1950年代になってペリーコのアンソロジーでエル・チャケータが歌って復活した。
古い録音は無いと書いたが、考えてみればこれだってもう70年前の事だから若い人にとっては十分古いのかも。
さてミラブラーの歴史を調べると、カディス県の港町サンルーカル・デ・バラメーダに辿り着く。
市場や町の中で売り歩く物売り達のふれ声や歌から始まり、後にティオ・ホセ・エル・グラナイーノが整え、最後には大歌手アントニオ・チャコン(1869~1929)がこのスタイルを完成させ、その類まれな歌唱力によって普及させた。
そのチャコンの録音を収録したグラン・クロニカvol.33の22曲目から、この曲種ミラブラーで必ず歌われる歌詞を書き出してみよう。
(Letra)
¿A mí, qué me importa
que tú me culpes?
Si el pueblo es grande
y me abona;
voz del pueblo,
voz del cielo y anda.
Si no hay más ley
que son las obras,
y con el mirabrás y anda.
(訳)
お前が俺のせいにしようが
それが何だっていうんだい。
民の力は偉大で
俺の味方なのさ、
民の声こそが
天の声なんだ。
俺たちが作り上げたもの、
それ以上の法律はない
だからミラブラでもって、いざ!
まるで昔の日本の自由民権運動の歌みたいだが、実際カディスは19世紀初めのフランスとの戦争においても最後まで降伏しなかったので、スペイン各地の自由主義者たちがカディスに集まり1812年憲法を制定した。
そうした歴史を反映したのがこの歌詞だろう。当時の自由主義は庶民の間にまで広まり、歌詞に反映されたのです。
【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~33(以下続刊)。
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