(sábado, 11 de enero 2025)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai
前回取り上げたアグスティンのスタイルには、La Perla de TrianaのEl árbol que está en el cerro(丘の上にある木)、Curro MairenaのSiéntate y ponte pensar(座ってよく考えるのだ)、Niño de las CabezasのCapilla del Carmen(カルメンの礼拝堂)などの例があります。
トゥリアナの人もアルカラーのスタイルを歌っていますし、アルカラーの人もトゥリアナの歌を歌う、という具合に以前はスタイルに対するこだわりが今程無く、ウトレーラも含めた近い文化圏の人々は割と自由に好きなものを歌っていました。
他にもアルカラーの歌はまだまだありますが一応ここまでとして、今回から「マラゲーニャの王様」メジーソのマラゲーニャを始めます。
Malagueña del Mellizo
メジーソのマラゲーニャとして歌われるものは主として2つのスタイルがありますが、実は1910年にニーニョ・デ・ラ・イスラ(本名ホセ・ロペス・ドミンゲス、1877~1915?)がちゃんとマラゲーニャ・エスティーロ・エンリケ・エル・メジーソと明記して録音した歌が、現在歌われているものとはかなり違うのです。
ニーニョ・デ・ラ・イスラはかなりな歌知りで、カディス(サン・フェルナンド)の人ですし、恐らくメジーソを直接聴いたであろう歌い手ですから信憑性は高いと言えるでしょう。
メジーソも恐らくは現在歌われているスタイルだけでなく、他にもマラゲーニャを歌っていたであろう事は想像がつきますから、これもメジーソのスタイルに加える事にしました。(現在ではほとんど歌われていませんが。)グラン・クロニカのvol.5に収録してあります。
(Letra)
Que no quiero,
(yo no quiero)
gastar bromas con to el mundo,
(ay, sabiendo que yo no quiero,)
la sangre la tengo 〈poría〉
y el corazón lo tengo negro,
vas a acabar con mi 〈vía〉.
(訳)
俺は嫌なんだ
(そんな事したくないんだ)
世の中を茶化す事など
(したくないのは承知の上)、
俺の血は腐敗して
心も真っ黒、
お前が俺の人生を終わらせるのさ。
◎〈poría〉⇒ podrida(腐った)
◎vía ⇒ vida(命、人生)
◎gastar broma ⇒冗談を言う
心ならずもすべてを冗談で済ませて世の中を渡って生きてきた男が、ついに行き詰まって破局を迎えている…という風に私には取れましたが、この歌詞の本当の所は歌う人が自分で考えるべきでしょう。
メロディーを辿っていくと、メジーソの特徴が少しだけ現れてきます。
【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~35(以下続刊)。
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