(lunes, 8 de julio 2024)
文/エンリケ坂井
Texto por Enrique Sakai
Joaquín el de la Paulaのソレアー②
アルカラーのソレアーを代表する創唱者であるホアキンの二つ目(便宜上の番号で、正式に番号が付いているわけではない)のエスティーロ(estilo, 型)を取り上げます。
前回の①はアルカラーの顔とも言うべき最も知られたスタイルですが、今回のはもう少しマイナー。
もちろんカンテとしてはアルカラーの重要なレパートリーであり、多くの歌い手達によって古くから録音されてきました。
今回②の例として取り上げるのは、Juan Talega(ファン・タレーガ、本名Juan Agustín Fernández Vargas, ドス・エルマーナス町出身で1891~1971年)の録音から。
ファン・タレーガはホアキンの兄、アグスティンの息子でホアキンのソブリーノ(甥)にあたる直系のヒターノ。
馬の仲買人を生業としており身内のフエルガでしか歌わなかったが、その純粋な味わいは次第に評判を呼び、アントニオ・マイレーナを始め多くの歌い手達が彼を聴くためにやって来たという。
そのマイレーナの後押しもあって、50年代中頃から舞台に登場。59年にはコルドバの全国カンテコンクールでトナー、ソレアー、シギリージャ部門で優勝。以後、各地のフェスティバルにカンテ界の長老として登場するようになり、60年代の初めにスペイン・コロンビアから4曲入りのEPを、その後アリオラにも数曲録音したが彼自身のLPレコードは残さなかった。
しかし幸いな事に、アンダルシアでのフェスティバルやプライベートなフエルガの録音を集めた単独LPが、彼の亡くなった後アンダルシア州政府から「フラメンコの黄金シリーズ」として制作されたのは我々アフィシオナードスにとって実に嬉しい出来事だったし、フランスのシャン・ドゥ・ムンドからもCDとして発売された。
(Letra)
Quise mucho a una mujer
tuve un momento de loco
y esa mi ruina fue.
(訳)
ある女に惚れた末に
ある時俺は狂ってしまった、
それが身の破滅のもとさ。
※Quise ⇒ quererの直過1単(愛した)
※tuve ⇒ tenerの直過1単
※ruina ⇒崩壊、破産、破滅
詞の内容は、恋の病が高じて事件を起こしそれが身の破滅の元となったという事。
ヒターノの社会は男女の付き合いとか結婚には厳格ですから、破ったら彼らの社会から爪弾き(つまはじき)される例を私も見た事があります。
これは3行詞ですが1,2,3行目と繰り返しも無く実にシンプルに歌い、エキスやエッセンスなど純粋な本質を取り出して濃縮したソレアーです。
誰にでも出来る事ではなく、ファン・タレーガのようにこのソレアーを知り尽くし、その声の響きを持ち、その時代の環境を生きた人ならではの表現なのでしょう。
最初のQuiseを頭の一音節を抜いて(Qui)se~と始める事はよくある事で、続く歌詞の意味からこれがQuiseかDiceか、あるいはDicenか、などと推理すれば良いのです。この場合は1人称、つまり主語は私ですからQuiseでいいわけですね。
【筆者プロフィール】
エンリケ坂井(ギタリスト/カンタオール)
1948年生まれ。1972年スペインに渡り多くの著名カンタオールと共演。帰国後カンテとパルマの会を主宰。チョコラーテらを招聘。著書『フラメンコを歌おう!』、CD『フラメンコの深い炎』、『グラン・クロニカ・デル・カンテ』vol.1~34(以下続刊)。
※CD『グラン・クロニカ・デル・カンテ』シリーズを購入ご希望の場合は、アクースティカ(https://acustica-shop.jp/)へお問い合わせください。(編集部)
>>>>>