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カニサレス特別公演 ~フラメンコギターの夜~

(lunes, 11 de diciembre 2023)


2023年7月18日(火)

船橋市民文化ホール(千葉)


文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko

写真/川島浩之

Fotos por Hiroyuki Kawashima

カニサレス2023年船橋公演©川島浩之

 世界最高峰のオーケストラと名高いベルリンフィルとの共演や、数々の協奏曲の作曲を手掛けるなど、演奏家としても作曲家としても高い評価を得る世界屈指のフラメンコギタリスト、ファン・マヌエル・カニサレスの約5年ぶりとなる来日公演ツアーが開催された。

 埼玉・所沢を皮切りに神戸、大阪、愛知東海、東京、船橋、横浜と日本各地を巡り、またツアーに先駆け名古屋フィルハーモニー交響楽団の演奏会にも出演し、自身が作曲した「地中海協奏曲」の日本初演も果たした。

 そして千葉・船橋公演では、今回のツアー唯一となるフラメンコダンサーとの共演がプログラムに盛り込まれ、舞踊家・振付家として活躍中の佐藤浩希らが出演した。


 ステージは2部構成で、第1部は自身の作曲によるギターとオーケストラの協奏曲3作品からギターデュオによる演奏にアレンジした楽曲で構成され、第2部はスペインの有名な作曲家によるフラメンコの要素が凝縮される楽曲や、カニサレス自身が作曲したフラメンコの曲を揃えた。


 第1部はカニサレスのギターソロで幕を開けた。恩師であり友人でもあった、巨匠パコ・デ・ルシアを失った深い悲しみと彼への敬愛が込められた大切な曲。繊細でいて細やかな音色が響き渡り、1つ1つの音が切なさや懐かしさとともに輝くように聴こえてくる。

 2曲目からはセカンドギタリストのファン・カルロス・ゴメスが加わり、ギターデュオによる演奏に。「カディス」はブレリア風の曲で、フラメンコらしいグルーヴ感が溢れる。鮮やかな速弾きも繰り出し、互いにアイコンタクトを取りながら息の合ったコンビネーションを見せる。

 「コルドバ」は、カニサレスがコルドバ・ギターフェスティバル40周年の記念に依頼されて作曲した「モサラベ協奏曲」のギターアレンジ曲。ミドルテンポで厚みのある深いサウンドからは、雄大な光景のイメージが広がる。終盤はテンポを上げ転調で曲も盛り上がり、流れるような指さばきに思わず見入ってしまう。

 4曲目となる「バレンシア」は、2018年に作曲した「地中海協奏曲」をギターのためにアレンジした「地中海組曲」からの一曲。明るく陽気なフレーズからは陽光のまぶしさを感じ、港の活気が目に浮かんでくる。


 ここで、カニサレス本人がマイクを持ち、観客への挨拶と共演の佐藤について紹介する。

 佐藤は黒のコルドベス帽をかぶって登場。軽快なステップを奏でながら、伸びやかに曲を楽しむように踊る。帽子使いも巧みで、舞台にセットされたコンパネ板いっぱいに自由に踊る。曲の雰囲気に溶け込みながら時折きらりと光る存在感を見せ、ギターと踊りの絶妙なハーモニーを演出した。


 第2部の始まりは、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」より「アランフェス・マ・パンセ」をギターソロで披露。紫からオレンジへと上下にグラデーションされた照明が、ノスタルジックな情景を演出する。オリジナルアレンジを加えたスローテンポの曲に、静かだが芯の通った音色を響かせる。

 2曲目はファリャの「粉屋の踊り」をギターデュオで。ミドルテンポの、ちょっと不穏な気配を感じさせるフレーズ。あまり聴きなじみのない曲で、スペインの独特な音色が印象的だった。


 3曲目からは、カニサレスのオリジナル曲を披露。「悠久」はミドルテンポの曲。甘く美しいメロディーからは切なさや愛しさが伝わってくる。速弾きも美しく、抒情的でまるで歌っているかのよう。

 ここで照明が暗くなり、星空を演出するようなライトが灯る。ミドルアップテンポのルンバ「魂のストリング」は、ムーディーで熱いハートを感じさせるメロディー。ルンバのリズミカルなノリが心地よい。

 次はがらっと違った趣のルンバ「彗星の雨」。底から湧くようなキレの良いグルーヴ感。スーパー速弾きも圧巻で、熱くフラメンコギターの魅力が凝縮されたような演奏だった。

カニサレス2023船橋公演©川島浩之

 そして最後の曲「深淵」では、再び佐藤とパルメーロとして矢野と三四郎が登場。ブレリアの曲に乗せてそれぞれがひと振りずつ踊り、最後に佐藤がもうひと振り披露して、フラメンコ舞踊の楽しさや魅力も観客に伝わるような充実のステージだった。


 作曲家として演奏家として類まれな才能に溢れるカニサレス。様々な音楽シーンでの活躍もさることながら、やはりフラメンコギタリストとして素晴らしい演奏家だと改めて実感した。心の琴線を震わせるような細やかで美しい音色を奏でる一方で、フラメンコ特有の切れ味や深みのある演奏も見事だった。

 今回のツアー後も間を置かずして世界各地を飛び回り多忙な演奏活動が続いているが、再び日本でその音色を聴かせてくれる日を、今から楽しみに待っている。


【出演】

カニサレス(ギター)

ファン・カルロス・ゴメス(セカンド・ギター)

佐藤浩希(スペシャルゲスト、フラメンコ舞踊)

矢野吉峰(パルメーロ/手拍子)

三四郎(パルメーロ/手拍子)


【プログラム】

[第1部]

1.      アルヘシラス(「アル・アンダルス組曲」より)

2.      カディス(「アル・アンダルス組曲」より)

3.      コルドバ(特別アレンジ、「組曲・モサラベ」より)

4.      バレンシア(「地中海組曲」より)

5.      バルセロナ(「地中海組曲」より)


[第2部]

1.      アランフェス・マ・パンセ(「アランフェス協奏曲」より)

2.      粉屋の踊り(「三角帽子」より)

3.      悠久

4.      魂のストリング

5.      彗星の雨

6.      深淵


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