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アルテイソレラ舞踊団30周年記念公演

Flamenco Caleidoscopio


(martes, 27 de junio 2023)


2022年12月2日(金)・3日(土)

よみうり大手町ホール(東京)


文/金子功子

Texto por Noriko Kaneko

写真/川島浩之

Foto por Hiroyuki Kawashima

アルテイソレラ舞踊団30周年記念公演 Flamenco Caleidoscopio   2022年12月2日(金)・3日(土) よみうり大手町ホール

 フラメンコ舞踊家、鍵田真由美と佐藤浩希が率いるアルテイソレラ舞踊団の30周年を記念する舞踊公演が上演された。タイトルの「Caleidoscopio」とは、日本語に訳すと「万華鏡」。その理由について佐藤は、フラメンコは同じ歌詞やメロディーでも歌う人や弾く人により全く違う曲に聞こえたり、また同じ振付でも踊る人それぞれの個性や人生がそこに表れその人独自の芸術へと昇華させるものであり、そのような表現の豊かさと、また長年舞踊活動を共にする舞踊団員や客演として招いたダンサーひとりひとりの魅力も伝えたいという想いからだと、プログラムの序文で語っている。

 未だ不安や悲しみが尽きない今の時代にできることは何か、という自問に対する答えがやはり「踊ること」であり、人間の強い生命力を宿すフラメンコを、多くの人に観てもらい少しでも元気になってもらいたいという願いから、もう一度原点に立ち返り今回の公演を企画したという。


 全10曲で構成されたプログラムは、ソロに群舞にバリエーション豊かな作品が揃えられた。

 1曲目のロマンセは、舞台中央に登場した鍵田のソロから始まり、その後ろに並んだ横2列の群舞、女性のみの群舞、矢野のソロ、佐藤と工藤のパレハ(デュエット)と、次々にフォーメーションが変化する。ひとりひとりがその個性にふさわしい衣装に身を包み、カラフルな光景が繰り広げられる。その様子はまさに、筒をくるくる回すと中の模様が次々に変化していく万華鏡のよう。次の展開を期待してわくわくするような演出だ。

 同じく男女の群舞によるアレグリアスも、衣装や踊りにそれぞれの個性が表れ視覚的にも楽しい。紫のバタ・デ・コーラで華麗に舞ったり、赤のドレスとマントンで踊る姿はやはり大舞台でよく映える。2人や3人で踊ったり一列になったりと、テンポよく正確に変化するフォーメーションはやはり舞踊団で日々鍛えられている賜物だ。

 男性5人によるソレア・ポル・ブレリアは、ゆったりしたテンポの曲を味わうようにソロやパレハを披露。一列に揃っての踊りは男性ダンサーならではの迫力があり、黒のスーツに各々違う色のチーフでアクセントを付けた衣装はさりげないセンスが光っていた。

 セラーナは、アースカラーの衣装でそろえた舞踊団員らが大地の雄大さを感じさせるような迫力の群舞を展開。男性ダンサーらによる足技も力強く、カンテの張りのある歌声やラメンテ(嘆くような歌唱パート)がよかった。


 ソロのプログラムも、様々な曲種が並ぶ。工藤は、踊りではほとんど演じられることが無いというファンダンゴ・ポル・ソレアを披露。スペイン各地で伝統的に歌い踊られ、後にフラメンコの重要なレパートリーとして定着したファンダンゴを、ソレアのリズムに乗せて踊る。青のドレスで踊るマルカールが美しい。そこに男女の群舞も加わり、ボリュームのある構成を演出する。

 鍵田のソロは、パリージョ(カスタネット)を使ってのシギリージャ。パリージョの音色もキレが良く、しなやかな身体使いで踊る姿は何度見ても見惚れてしまう。1曲の中でシーンごとに自身の印象を自在に変えるような舞踊表現に、彼女の舞踊家としての底力と魅力が表れていた。

 佐藤のソロは2曲。カンパニジェーロスは、スペインでは主にクリスマスソングとして一般に親しまれている曲で、フラメンコ舞踊として踊られることは珍しいという。ゆったりしたリズムで、定番のフラメンコとは一味違う趣きを魅せる。一方、ティエントでは風来坊のようなコケティッシュな踊りで、歌にねっとり絡みながらコンパスと戯れるようなグルーヴを醸し出す。飄々として、ショーマンのようなパフォーマンスで観客を楽しませた。


 今回の公演では、特別出演した津軽三味線奏者の浅野の才能が光った。ブレリアスではスペインのヘレス特有のリズムに乗ってフラメンコギターとの熱い競演を繰り広げ、高速弾きはまさに超絶技巧の領域に達していた。

 舞台のラストでは、スペインでの見聞からインスピレーションを得たというオリジナルの新曲を披露。日本語の歌詞による、和の要素とフラメンコで浅野が感じたままを表現した壮大な曲だ。民謡歌手でもある浅野は歌が上手く、発声がクリアで歌詞の意味も分かりやすい。

 歌が終わるとソレア・ポル・ブレリアの音楽へ。男性ダンサーらのパルマも加わり、鍵田が着物のようなコートをマントンのように翻し、ダイナミックな舞踊を表現する。

 クライマックスは桜の歌詞の歌が流れる中、紙吹雪がステージを彩った。鍵田が全身で心を込めて踊り、休憩無しの約90分に及ぶ劇場作品は、温かい雰囲気に包まれながら幕を下ろした。


 フラメンコの多彩な魅力を次から次へと見せてくれ、まさに「万華鏡」のような作品となった今回の公演。活動の原点を見つめ直した、舞踊団の節目の年にふさわしい舞台であった。晴れやかな笑顔で観客に挨拶をする団員のまなざしの先には、次のステージへの期待と希望が映っていたことだろう。



【プログラム】

1. ロマンセ

2. カンパニジェーロス

3. アレグリアス

4. シギリージャ

5. ブレリアス

6. ソレア・ポル・ブレリア

7. ファンダンゴ・ポル・ソレア

8. ティエントス

9. セラーナ

10. 永遠のまにまに


【出演】

[主演] 鍵田真由美

[演出・振付・構成・主演] 佐藤浩希

[カンテ] マヌエル・デ・ラ・マレーナ、関 祐三子

[パーカッション・パルマ] アレ・デ・ヒタネリア

[ギター] マレーナ・イーホ、斎藤 誠

[津軽三味線](特別出演)浅野 祥

[出演](ARTE Y SOLERA舞踊団)柏 麻美子、東陽子、工藤朋子、小西みと、中里眞央、小野寺麻佑、山﨑嬉星、清水梨々花、渡辺由香理、三四郎、中根信由

[客演] 矢野吉峰、権 弓美、松田知也



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